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ロシアの茶

ロシアの茶の栽培は1833年、クリミアにあるニキティ植物園で中国から入れた茶の種子が蒔かれたのに始まります。しかし、茶産業としては第一次大戦までさしたる発展はみられませんでした。1958年以後、茶の栽培は次第に広がり1980年代の終わりにはグルジアに67,000ヘクタール、アゼルバイジャンに13,000ヘクタール。クラスノダールに1,800ヘクタール、合計81,000ヘクタール(1989年)の茶園が作られました。

ソ連崩壊後、グルジア、アゼルバイジャンが独立したため、ロシアの主な生産地はロシア南西のクラスノダール地方となりました。しかし、ここではロシアの需要量の1%以下の生産能力しかないので、今日では完全に海外からの輸入に依存しています。1995年の輸入量は英国を抜いて世界一となっています。最大の輸入先はインド、次いでスリランカです。

ロシア人は17世紀から茶を飲み始めたものの、19世紀の始めまではあまり一般的な飲み物ではありませんでした。しかし、現在では喫茶はロシア人の重要な生活の一部となり、一人当たり1ヶ月の消費量は120~140グラムとなっています。ロシアでは、緑茶と紅茶の両方が飲まれますが、紅茶にはミルクは入れず、角砂糖やスプーン一杯のジャムを口に入れ、お茶をすすります。地域によっては渇きを癒すためもっぱら緑茶が飲まれます。別のところでは、バターやミルクと混ぜ、スープのような飲み方をしているところもあります。

ロシア人は、老いも若きもお茶好きで、食前食後を問わずよくお茶を飲みます。有名なサモワールは今日でも大変ポピュラーな家庭用品となっています。

(参考文献)

ロシアの茶市場の現状 紅茶会報No.214(1999)

(小泊 重洋)