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あまちゃ

甘茶といえばお釈迦様の誕生日に仏像に甘茶をかける、あの潅仏会(花祭り)で子供の頃甘茶を飲んだ経験のある方も多くおいででしょう。私も子供心に期待して飲んだわりにあまりおいしくなかったという記憶があります。

ところで、甘茶は植物のアマチャの葉をよく揉んでから乾燥させ、それを煎じたものです。甘茶を潅仏会に使ったり飲用にする習慣は、江戸時代からという説が一般的ですがはっきりしません。

滋賀県の政所では昔から、6月頃庭に植えてあるアマチャの、つぼみがつき始めた枝を刈りとって飲用の甘茶に加工して、それを煎じて毎日仏前に供えるという習慣があるそうです。

江戸時代の本草学者小野蘭山は「本草綱目啓蒙」のなかでアマチャの漢方名に「土常山」をあてています。これもアジサイのなかまのようですが種の特定がどうもはっきりしません。
また、「宇治田原(京都府)で栽培するが、諸国の深山にも多い」ともいっています。
現在では植物分類学的にアマチャは日本固有種のヤマアジサイの変異種であるというのが定説です。
ところが、名城大学の横内茂氏によると、アマチャはどれもヤマアジサイと見分けられる共通した形態的特徴があって、一つの固体またはグループが母体になって栄養体生殖、つまり挿し木で増やされた可能性も否定できないというのです。
また、アマチャについて文献をたどっていくと植物学関係からも、仏教関係からも先出の「本草綱目啓蒙」で途切れてしまうのです。さて、甘茶はどこで、いつ頃から飲まれ始めたのでしょう。まだ研究の余地が有りそうです。

(横井 淳平)