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お茶の盆栽

日本では、チャを飲み物として栽培する以外に、まれに観賞の対象として栽培することがあります。

ところで、チャの盆栽作りは何時から始まったのでしょうか。この点はどうも明らかではありませんが、江戸時代後期に幾つかの観賞用栽培品種が作出されていますので、こうした時代にチャの盆栽作りが始まったものかもしれません。たとえば、文政7年(1824)に上刻された『草木貴品家雅見』という植物の変わり物ばかりを集めた本には、チャの鉢植えが見られます。

チャの盆栽は、植物体すべてを観賞の対象として栽培するものです。無論、自然のチャの樹形は、盆栽に適した形ではありませんから、それだけに長い年月をかけて形を整えてゆかねばなりません。

さて、チャの盆栽作りには、種子から育てる方法、枝を挿し木する方法、古株を仕立てる方法が考えられます。特に古株を仕立てる場合、4、5年で観賞に耐えうるチャの盆栽ができあがるようです。ただチャは、移植が難しいといわれますが、昨今は発根ホルモン剤が市販されていますので、これを使用するとよいでしょう。2年目には前年に伸びた枝を選定します。2~3枚の葉を残して伸びた枝を剪定しますと、バランスのとれた樹形になってきます。3年目も同様の作業を繰り返し、4年目にはすてきな植木鉢に定植すると、これで立派なチャの盆栽のできあがり。もちろんチャの盆栽は、やや日陰において培養することもお忘れなく。

(参考文献)

小川茂男著(1978) 花物盆栽の仕立て方 誠文堂新光社、東京

(横内 茂)

植木屋金太著『草木貴品家雅見』(文政7年:1824)から。「きゃらびきちゃ」という珍品のチャを接ぎ木し、鉢で栽培したもの。