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湯飲み茶碗

私達が日頃から使っている「湯飲み茶碗」が一般に出まわるようになるのは意外に新しく、江戸時代以後のことです。何時頃から湯飲みと呼び始めたのかは知りませんが、抹茶を飲むための茶碗に対して湯を飲むための湯飲みというのも、いかにも庶民的な感じです。たぶん最初の頃は武士階級以上で湯や薬を飲むのに使われていたものが、江戸期の庶民経済の発展により煎茶を飲む習慣と共に一般化したのでしょう。

湯飲みは大きさも形もさまざまで、おおざっぱに言えば、わん型と筒型があります。特に細長い筒型のものを長湯飲みとも言います。また蓋付きのものも有りますが、最近では一般家庭で使われることが少なくなりました。以前は大切なお客様には蓋付きの湯飲みで茶托に載せてお出しするのが礼儀でした。

焼き物の種類や生産地によっても異なる特色をもっていますので、それぞれの特徴を生かして季節や茶の種類、出す相手などを考えて使い分けると良いのではないでしょうか。焼き物の種類としては陶器と磁器があって、低い温度で焼く陶器は磁器に比べてきめの荒い土を使いますから、厚く素朴で暖かい感じがして、実際保温性にも優れています。高い温度で焼く磁器は,土のきめが細かく、薄く上品で繊細さが有りますが、あまり薄い磁器は熱が伝わりやすいので熱いものには不向きです。

例えば、夏には広口で薄い磁器の湯飲みが清涼感もあって良いでしょうし、冬には陶器の長湯飲みが保温にも優れ、見た目も暖かい感じがします。

また、高級な煎茶には色なども楽しむために淡色の上品で小ぶりな煎茶碗を使いたいものですし、番茶は大ぶりな陶器の湯飲みで素朴なお菓子などと一緒にたっぷりいただきたいものです。

(横井 淳平)

①久谷焼、相馬焼②湯飲み(染付け)③有田焼、美濃焼(織部)、美濃焼(鼠志野)④唐津、萩、高麗青磁