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眼疾患に対する効果

一般に、活性酸素による酸化的障害は老化とともに増加し、様々な病気を引き起こすことが指摘されています。 眼の組織で活性酸素による酸化的障害を受けやすい部位として水晶体や網膜があげられます。白内障は水晶体が濁る病気ですが、その約9割は老人性白内障です。これは老化に伴って増加する活性酸素(過酸化脂質)が水晶体の水溶性たんぱく質を酸化し、透明性の低い不溶性のたんぱく質を生成して水晶体の混濁をきたすことが原因とされています。

網膜では老人性黄斑変性症が重篤な視力低下をもたらす疾患として恐れられ、米国では高齢者失明原因の一位となっています。これは網膜の黄斑部といわれる部位に集まっている文字や色を識別する視細胞が障害をうける病気ですが、その発症機構をはじめ、その予防や治療法はまだ確立されていない難病です。この疾病の発症前期にはドルーゼといわれるリポフスチン様蛍光物質が出現し、網膜傷害との関連が疑われています。

リポフスチンは脳や心臓など多くの組織で老化とともに増加することが知られています。リポフスチンの生成機構は複雑ですが、その1つとして、細胞膜を構成する不飽和脂質が活性酸素により酸化され生ずる過酸化脂質由来のアルデヒドがたんぱく質と反応して生成すると推察されています。 

このような活性酸素による酸化的障害を防止するために、私たちの体には様々な抗酸化物質が存在しています。すなわち、水晶体の酸化には水溶性の抗酸化物質が、また網膜の酸化に対しては脂溶性の抗酸化物質が主に働いていると考えられています。 

茶葉は多くの抗酸化物質を含有します(抗酸化作用の項を参照)。 例えば、水溶性抗酸化物質としてビタミンCを、脂溶性抗酸化物質としてビタミンEやβ-カロチンを、さらに、水溶性と脂溶性の性質もあわせもつカテキン類、特に茶は特有なエピガロカテキンガレート(EGCg)を豊富に含みます。 試験管レベルでの実験ですが、茶カテキンはブタ網膜の酸化により生ずる水溶性のリポフスチン様蛍光物質の生成を顕著に抑制すること、特に、過酸化を受けた脂質からアルデヒドが生成する過程を強く阻害することがわかってきました。

今後、研究が進展し、カテキンをはじめ種々の抗酸化性物質を豊富に含む茶の飲用が、これら眼疾患の予防に役立つことを期待したいと思います。

(参考文献)

  1. 平光忠久: 眼の老化と過酸化脂質、Geriatic Medicine, 32, 1075-1079 (1994).
  2. Sano M., et al.: 3rd International Symposium on Ocular Pharmacology and Pharmaceutics-ISOPP、Abstract, p.6, (2000).

(佐野 満昭)

網膜の酸化により生ずるリポフスチン様蛍光物質