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商品テスト情報-PETボトル入緑茶飲料-

容器入りの緑茶飲料は、1985年に缶入飲料として世に登場しましたが、1996年には小型PETボトル(500ml)が解禁となり、手軽な飲み物として広く利用されています。また、最近では健康志向や、新商品の発売などで消費が急激に伸びています。そこで、今回はPETボトル入緑茶飲料について、各種の成分を比較してみることにしました。
さらに、PETボトルはリキャップできるために、飲み残しを放置したり、外出先で持ち歩いたりすることがよくみられますが、これら緑茶飲料は、開栓してからどのくらい日持ちするのか、調べてみました。

テストしたのは・・・
静岡市内で市販されている、350mlまたは500mlの小型PETボトル入緑茶飲料(以下、PET緑茶)17銘柄です(表1)。

表示あれこれ

低温抽出

茶葉の浸出温度が低いことを意味し、今回は11銘柄がこれに該当しました。具体的温度が表示されていない銘柄もありますが、「低温」とは、玉露を淹れる温度である「60℃」以下とするのが妥当と思われます。なお、本テストではそれ以外の銘柄を、「通常抽出茶」と呼ぶことにします。

テアニン

緑茶に最も多く含まれているアミノ酸で、緑茶の旨味の主体をなしているといわれています。大脳に働きかけて、リラックスさせる働きもあります。

ビタミンC

各種茶の中で緑茶特有のものといってよく、効能としては、抗酸化やガン予防等があります。緑茶飲料には、茶葉由来の他に食品添加物(酸化防止剤)として添加されています。

茶葉の種類

明記されているのは9銘柄あり、煎茶、かぶせ茶、てん茶(抹茶)、玉露、釜入り茶のうち1種または複数種が記載されていました。また、3銘柄に産地の記載(いずれも静岡)がありました。

開栓後の取扱いについて

商品の表示には、「すぐにお飲み下さい」(11銘柄)、「冷蔵庫に入れ、早めにお飲み下さい」(2銘柄)などと記載されていました。

遊離アミノ酸

緑茶に含まれる主なアミノ酸は、テアニン、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸、セリン、グルタミンであり、この6種で全アミノ酸量の90%前後を占めています。表2に、各遊離アミノ酸の含有量の平均値及び標準偏差(値のばらつき)を示しました。低温抽出茶の方が、アルギニンを除き平均値は高くなっているものの、銘柄によってばらつきがみられることがわかりました。

カテキン類

カテキン類は通称、茶のタンニンと呼ばれ、緑茶に渋味を与えています。緑茶のカテキン類は、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(Ecg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)の4種が主要とされ、本テストでは、この他にカテキン(C)を加えた5種の含有量を調べました。なお、渋味の程度は遊離型のものは弱く、エステル型(ガレート)の方が強烈です。カテキン類の生理作用については、近年盛んに研究されており、抗酸化作用、抗菌作用、抗ガン作用、消臭作用等、さまざまな効能が確認されています。
表3に、カテキン類の含有量を示しました。低温抽出茶は通常抽出茶に比べ、エステル型カテキン(EGCg及びEcg)の含有量が少なく、渋味の強い成分が抑えられている傾向にありました。

カフェイン及びビタミンC

表4に、カフェイン及びビタミンCの含有量を示しました。カフェインについては、通常抽出茶と低温抽出茶との間に差はみられませんでした。また、ビタミンCについては、平均値で低温抽出茶の方が若干高いものの、銘柄間でばらつきがみられました。これは、酸化防止剤として添加された量等にも影響しているものと思われます。

家庭で飲む一杯の緑茶と比べてみたら

家庭では、茶葉を急須に入れ煎じて飲む緑茶が一般的ですが、これらの緑茶の旨味成分やカテキン類等の含有量は、どの程度なのでしょうか。ここでは、1,000円/100gの上級煎茶を用い、表5に示す条件で浸出した煎茶浸出液の結果を表6に示しました。
表6から、煎茶浸出液においては、遊離アミノ酸及びビタミンCが2煎目までにそのほとんどが溶出してしまうのに対し、カテキン類及びカフェインは3煎目においてもまだかなりの量が残存していることがわかります。また、このことから3煎目は1煎目に比べると、苦渋味がかなり強くなっていると思われます。さらに、煎茶浸出液の方がPET緑茶に比べ、総アミノ酸量(8種の遊離アミノ酸の合計値)は2.0~6.1倍、総カテキン量(5種のカテキン類の合計値)は4.4~7.4倍、カフェイン量は1.9~3.2倍多く含まれていました。ビタミンCのみPET緑茶の方が1.2~5.2倍多く含まれていましたが、これは茶葉由来の他に添加されていることによるものです。

開栓後の保存性は

小型PETボトルは、その手軽さから、そのまま口をつけて飲んだり(口飲み)、持ち歩いたりすることがよく見られます。この場合、中身の飲料は開栓してからどのくらい保存がきくのでしょうか。ここでは、当所職員に半量口飲みしてもらったPET緑茶を、5℃、20℃及び30℃の3つの温度に保存して、飲料の品質の変化を調べました。品質変化の指標としては、一般生菌数、濁りの有無及び褐色度としました。
図1は、一般生菌数の変化を示したものです。3つの温度のうち30℃においては、1日後には103個/ml に、3日後には107個/ml以上に、急速に菌が増加しました。この菌数の増加は、開栓直後に菌が全く検出されていないことから、主に飲用中に移行した口内細菌が増殖したものと考えられます。
また、カビ発生の目安となる、濁りについては、30℃で3日後に発生しました。さらに、カテキン類の酸化の度合いである、褐色度は、30℃における変化が著しく、緑茶の水色の褐変が進んでいると考えられました。これらの結果から、気温の高い夏季に、飲み残しを常温に1日以上放置した場合には、品質保持上、好ましくない状態にある可能性が考えられます。開栓後に飲み残しを保存する場合は、冷蔵庫に入れ、できるだけ早く飲みきる方がよいと思われます。

まとめ

  1. 今回の調査では、低温抽出茶の特徴として、渋味が抑えられている傾向はありましたが、旨味成分の含有量については各商品にばらつきがみられました。人によって緑茶に対する嗜好も異なりますので、「低温抽出」という言葉だけにとらわれず、価格や表示を参考に、自分の好みに合ったものを選ぶようにしましょう。
  2. 緑茶の旨味成分やカテキン類を摂取したい場合には、急須で淹れる緑茶が一番です。また、経済性や廃棄物のことも考え合わせると、小型PETボトルの緑茶は、できるだけ携帯用として利用するなどの使い分けが望ましいと思われます。
  3. PET緑茶は夏季に飲用する機会が多いので、開栓後はすぐに飲みきるのが理想です。飲み残しが出た場合には、冷蔵庫に保存しできるだけ早く飲むようにしましょう。

※ 右表のキャプション
1:テストした商品/2:PET緑茶中の遊離アミノ酸含有量/3:PET緑茶中のカテキン類の含有量/4:PET緑茶中のカフェイン及びビタミンC/5:煎茶の浸出条件/6:煎茶浸出液における各成分の含有量/7:飲料中の一般生菌数の変化 (画像をクリックしてください)

(静岡県環境衛生科学研究所)