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お茶の遺伝子解析

チャのゲノム解析はヒトやイネに比べ組織的な動きが乏しく、立ち後れています。従来行われたのは育種選抜用のDNAマーカー探索や、数える程の遺伝子単離(GenBank登録件数14件)位です。

静岡発祥のヤブキタ種が今だに全国生産量の70-80%を占めるという現実は、その特性の優秀さよりも、単一品種であれば育てやすく生産コストが抑えられるという側面が大きく効いているようです。しかし単一品種だけだと天候の影響も均一で、その年の気まぐれなお天気で生産量が大きく変動するというリスクを伴います。最近は消費者の嗜好の多様化、さらには変化も進んでいます。この多様な嗜好に応じたヒット品種を探り当て、生産コストをそれ程上げずに複数品種を生産し、生産総量を安定化させるのが、嗜好の変化にも対応できて望ましいと考えられます。

チャは1年生作物のイネとは対照的に1回の交配・選抜に年数がかかり、少なくとも3年から5年が必要です。この点で遺伝子組換えによる品種改良が有用となります。当研究室でも、筑波大学などと共同でアグロバクテリウムにカフェイン合成酵素のアンチセンスDNAなどを遺伝子組換えで導入し、チャへの感染を進めています(図参照)。これは体に不安のある人や体の弱い人に対する薬理効果の強いカフェインなどを除いた健康志向の新品種をめざすものです。

最近は遺伝子組換え食品に対する消費者の拒否反応が強く、しばらくは研究開発技術レベルと一般の人の理解レベルとの間のギャップを埋めるのに時間がかかると考えられますが、近い将来に機能性緑茶として上梓できる日を夢見ています。

(常吉 俊宏)

チャへのアンチセンスDNA導入法(画像をクリックしてください)