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喫茶文化の紹介

お茶は粉を食べるため?

中国西蔵自治区、これはかつての独立国チベットのことです。ダライラマが、仏教と一体化した独自の政治を行ってきた首都ラサのポタラ宮殿は、ちょうど富士山と同じくらいの高さにあり、慣れていない人はたいてい高山病にかかって苦しみます。

高所の乾燥地帯に住んでいるチベット族は、変わったお茶を飲みます。それはバター茶といって、煉瓦のように固められたお茶を削って煮出し、それを木で作った長さ1m、直径15~30cmほどの筒に入れ、ピストンで攪拌したものです。朝食にはツァンパといって、このお茶で麦焦がしを練って団子にしたものを食べます。なんと風変わりな食べ物のようですが、じつはこれとそっくりな食べ物が日本にもありました。静岡市郊外では「濃い茶に香煎」といって、香煎をお茶でこねて食べていましたし、福井県大野市でも自家製の番茶で香煎をかいて食べました。

豆や麦は煮るのに時間がかかってすぐには食べられません。しかしあらかじめ炒って粉にしておけば栄養価の高いインスタント食品となります。ただ一つの欠点は、粉がのどにはりついてむせてしまうことです。そこで、泡にくるんだり、お茶で溶いて食べる方法が大変効率がよいということで普及したのでしょう。お茶は茶粥だけでなく、このような食べ物とも深い関係をもっています。しかもそれが日本だけでなく、東アジア全域と共通の要素をもっているということは、お茶の世界がいかに広いものであるかをよく示しています。

(中村 羊一郎)

ツァンパを食べる

ツァンパを食べる(中国西蔵自治区ギャンツェ)

いりこ

いりこ(福井県)

いりこ

いりこ(福井県)

ツァンパ

ツァンパ(チベット)

参考文献および写真提供:旧金谷町お茶の郷博物館